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(いもりねかだん) 募集案内 作品案内
■ 令和二年度の募集 入選作 発表
たくさんのご応募 ありがとうございました。以下の作品が入選されました。


いつもと違う夏
学校法人四條畷学園 理事長 小谷 明

 今年の夏は例年にない暑さで熱中症の心配をしながら、感染症対策でマスクをするという光景が珍しくない「いつもと違う夏」になりました。短い夏休みが明け、酷暑の中で新学期が始まりました。近年、地震や台風などの災害が起こるたびに、日常の当たり前の大切さに気づくということがよく言われますが、今回の新型コロナ問題で皆さんはどのようなことを感じ、どのような気づきがあったでしょうか。

 家族の大切さでしようか。
 それとも友達の大切さでしようか。

 先日、コロナ禍の不安な世相を反映したのか、あるテレビで児童文学書として世界的に有名な「モモ」が最近ふたたび注目されているという話題をとりあげていました。その中で、高校一年生のある男子生徒がこの本を読み、不安は「人との関わり」の中でしか解消されないことに改めて気づいたという話をしていました。丁度、今年の中学卒業から高校入学以降の休校期間中、友達との出会いもなくなり不安な日々を送っていた時に読んだそうです。今回の飯盛嶺歌壇の中にも、同じような気持ちでつくられた歌が数多くあるように感じました。例年以上に歌をつくることで周りの人たちとの共感の大切さを学ぶ機会になったと思います。
 SNSの時代、これまで以上にたくさんの友達がつくれるようになりましたが、社会的距離が求められる時代になり、改めて人と人のこころの近さが大切になると感じたのではないでしょうか。苦境の時に互いを支え合う、深い絆を持つ家族や友達の大切さを感じたのではないかと思います。感謝の反対は当たり前だと言われますが、これまで当たり前だと思っていたことから、たくさんの感謝の気づきを見つけて欲しいと思います。

 今回の新型コロナについては、今のところ、特効薬はなく、話題となっているワクチンが開発されたとしても、必ずしも万能ではないと言われています。そんな中で最近「免疫力」という言葉をよく聞くようになりました。人間がウィルスなど外部から攻撃を受けた時に自らを守るための抵抗力と言ってもいいでしょう。免疫には人間が生まれながらに持っている「自然免疫」と生まれた後の環境を通じて備わる「獲得免疫」があるそうです。その「免疫力」を高めるためには食生活や生活習慣のほか、例えば、「笑いと免疫力」の関係についての研究も発表されているように、メンタル面も重要な要素になると言われています。その意味では、新型コロナに対する不安感が感染症対策で最も重要な「免疫力」を低下させているという科学的な視点を踏まえて、冷静にメディア情報に接する必要があるように思います。

 この「免疫力」については以上のような感染症対策だけでなく、人生にとっても大変重要になるという話を作家の塩野七生さんがしていました。
塩野さんはイタリア在住で千年間続いたローマ帝国を描いた「ローマ人の物語」の著者として大変有名です。今年の正月、NHKの番組で母校の付属高校の生徒に対して、「人生で役に立つ唯一のこと」という話をしていました。千年間という長い歴史の中で様々な人物を描いてきた塩野さんの人生観・人間観ということで大変興味深く見ていました。結論から言えば、「人生で役に立つ唯一のこと」とは「挫折に対する免疫(慣れ)」ということでした。具体的には、塩野さんご自身の受験と就職、執筆の時の三つの挫折の話を通じて、人は壁にぶつかると本気で考え始める、という「挫折の効用」について話していました。特に、若い時に身につけた「挫折に対する免疫(慣れ)」は人生の「免疫力」になり、挫折の不安に怯むことなく、挑戦の気持ちを持ち続けることができるというのです。
 最近では新型コロナの特性も少しずつわかってきました。その中で、若い人たちにとって、感染することよりむしろ自粛の影響で挑戦の気持ちが失われることの方が将来的に影響が大きいのではないか、と言う声も出てくるようになりました。今後は、「正しく恐れる」という言葉のとおり、正しい情報に基づき、基本的な感染対策を徹底しながら、一方で、不安に怯まず、挑戦の気持ちを忘れないようにして欲しいと思います。

 今回皆さんは、いつもと違うコロナ禍での夏に、歌をつくること、共感を伝えることに挑戦しました。挑戦や行動がないところに感動の共有など生まれません。皆さんが歌を生み出した時と同じように、「まず、つくってみる」「まず、やってみる」という前向きな気持ちで様々なことに挑戦して下さい。そして、皆さんのこれからの人生で様々な壁にぶつかった時に、たくさんの大切なことを学び、気づいた「いつもとは違う夏」のことを皆さんがつくった歌とともにぜひ思い出して、力をもらって下さい。
 皆さん一人ひとりが、with コロナと言われる時代を挑戦の気持ちを持ち続け、たくましく成長し、活躍されることをこころから願っています。

以上

 



飯盛嶺歌壇 令和二年度 入選作品 紹介

厳正な審査の結果、以下の作品が入選作品として選ばれました。

【小学生入選作品】

【天賞】
後はいを支えてこその先ぱいだ一回だけの六年生だ
【地賞】
ランドセルつゆの背中に参ったな顔にはマスク熱帯雨林
君笑う君がぼくらの宝物信じてみよう自分の気持ち
【人賞】
学校でねん土をやってたのしいなへんになったよでもたのしいな
よるのそらそらいっぱいにはなびさくいろとりどりのうちあげはなび
手洗いと消毒ちゃんとやっててもマスクするのはたまにわすれる
【佳作】
がっこうのばったがぴょんとうれしいなあさがおゆらりはっぱにはねる
おんがくはおどれるおんぷたのしいよかなしいときはいやされるかも
あさがおのふたばとほんばかわいいなすくすくそだっておおきくなあれ
朝がおは夏にさいたらかたつむり雨の日くるよなんどでもくる
あおいそらあおいひかりがさしてくるにほんのひかりきれいななつだ
学校で友だちづくりたのしいなみんなであそぼなにしてあそぼ
花負けないぞ取られた春を取り戻せみんなのえがおコロナげきたい
あついなつコロナのせいでマスクつけいきぐるしいよあせだくだくだ
いえのまえせみのなきごえひろがってこころとともにてんへのぼるよ
ひますぎる自粛生活もういやだ早く終われよコロナウイルス
葉月の夜みなであつまれぼんおどりたいこの音とリズムあわせて
ころもがえがらっとかわるふんいきがきおくにないよこんなの買った?
七夕の美しき色たんざくの思いよとどけかなう星空
ニシキゴイみんな集まりたきのぼり口をパクパクおしょくじタイム
おとうとが一年生になったから行きも帰りもいっしょだなぁ
ふり出した波もんの先に水の音小さな池はお祭りさわぎ
ながかったコロナで休んだきかんでもズームであえたあたらしい級友
初夏の雨運動場が水びたしプール入れずゆうつうな日々
泳ぎたい夏の暑さと反対に涼しそうだな空の水色
窓を開けカーテンなびき通る風煙がのぼる蚊取り線香
お姉ちゃん一年生のその言葉卒業しても忘れたく無い
あと少し卒業までは数ヶ月思い出作り早くしないと



【中学生入選作品】

【天賞】
該当者なし
【地賞】
4階のベランダから見る今日の空疲れなんかどうでもよくて
【人賞】
制服の墨のよごれも愛おしくなる日がもうすぐそこに
【佳作】
もうやめて今年はみんな疲れてる水害コロナ総理もダウン



【高校生入選作品】

【天賞】
紫陽花の咲き乱れている通学路期待と喜び鞄に入れて
【地賞】
帰り道春を旅する花びらに今年は一度も遭遇できず
知らぬ間に距離をおいてた友人の優しさに気づく長期の自粛
【人賞】
春がきた電車通学ローファーで慣れない制服気になる視線
転んでも何回だって立ち上がる努力の花が咲きほこるまで
春終わる入学式は夏服でまぶしい日差し新入生
雨音にふと目が覚める午前二時風が頬撫で夢か現か
【佳作】
ずぼらしたその日の内に懺悔する寝る前だけど頑張ろうかな
踏切で太陽浴びてポタポタと溢れ出す汗猛暑日の予感
スカートのきれいな折り目新入生その顔とても初々しくて
おいコロナみんなをこまらせ楽しいかあなたが今すぐ自粛してよ
女子クラス恋はどこかとさがすけど見つけた恋はテレビのむこう
ソフトボールコロナ期間はステイホームでもこれからはプレイボールだ
制服に着替えてからの大事件すももの汁がピッと弾けた
高校生改札降りて通う道踏み出す度に高鳴る思い
自粛中新たな家族ハムスター暗い心に明かりが灯る
草の香の青さと空の青さには宿るただよう若人の想い
夏休みプールに花火友達と今年はなにも出来ないなんて
休み時間廊下に響く笑い声続くといいな三年間
足踏み入れ周り見回すクラスの中新たなページ心に刻む
夏の空ドドンと大きな花火咲く袖持つ君の揺れる横顔
黒板とチョークの音と満腹感睡魔と戦う5時間目
バタ子さんアンパンマンのニューフェイス投げるたんびに肩いきそう
変わりゆく新たな世界と生活に夢と不安と希望をもって
あの景色もう一度だけみたいから心と青春すべてをささげる
青春を返せよコロナぶっコロナ死ぬまで呪う覚悟しとけよ
緑々し中にぽつんと赤鳥居ふと懐かしむ知らぬ原風景
生活がコロナで一変暗闇に試行錯誤で光を探す
暑い夏目がくるくるとせんぷうきはねを見ながら過ごす一日
悩みなど笑って上を見上げれば小さく見える夏の青空
ひさかたの天を仰げぬ日々過ごすたまるはおもいと課題なりけり
志村けん沢山の愛有難ういっぱいいっぱい助けられたよ
オンラインなかなかできずくろうして提出できたひと安心
失って初めて気づく偉大さに彼岸花から悲しき思い出
空の下見上げておもうは明日の今見上げた先に意味を見い出す
この期間することなくてダイエット学校行くとリバウンドする
病んでても君をみれば思い出すドルチェアンドガッバーナ
木漏れ日のレースをまとって眠るきみ今がチャンスとふるえるゆびさき
裸眼では手が届きそうすぐそこに心揺さぶる水無月の月
目が覚めて時計を見たらあら遅刻こすって見たらねぼけてただけ
青春は花火のように一度きりぱっと光ってきれいな景色
新学期初めましてさようなら気持ちを切り替え楽しくするぞ
授業中自転を説明するために右手と左手ぐーるぐるぐる
無機質な手のひら大の箱の中僕のつながり溢れんほどに
三回目ここまでくると慣れてくる私の推しの熱愛報道
ストレリチア種がなくては花咲かず夢がなければ叶わないまま
天然の鏡に映る夕焼けがうぐいすの声連れていった
窓ごしに見える校庭さわがしく清風とともに砂ぼこり立つ
三年目夢の舞台がなくなったそれでも目指すは大阪イチバン
必然に出会えた事が運命だあなたの側に居られますように
コロナ君あなたはなぜにここへ来たあなたのせいで災難な年
ひましてる自粛期間でテレビみて宿題追われ妹パニック
この期間差別とコロナ起きたけどこんな世の中二度と来ないで
コロナ明け通勤通学気をつけてマスクをつけて周りと距離とる
自粛中いつもは無口な弟と暇持て余し会話はずむ
損をする工夫次第でいち日が楽しくなるよどう在りたいか
オンライン家族でわけるギガパック速度制限過去最速
競泳の第一目標高校新その先にある東京五輪
青い空無限の希望どこまでも行ける気がするきっと行ける
したいこと何もできない頼むからみんなで一年やり直そうよ
強がりな性格いつも邪魔をする素直になれず後悔ばかり
なつまつりいけるとおもったともだちとコロナのせいでむりじゃんか
小池さん柄つきマスクかわいいな私はいつもアベノマスク
描くんだ僕らの人生キャンパスだ白の紙から色とりどりに
空に咲く日本の宝満開で感謝の気持ち忘れぬように
春風に背中押されて歩み出す我ら求めるあの日はどこへ
どうぶつもコロナかかるで気をつけやあつまらないで三密の森
燃えたぎる心と共に歩いてる我ら勇者は永久不滅
道路端眩しいばかりに顔を出すしたたかに咲く不屈の黄色
清水に眠る骸は浮かばれず送る山にも火は灯らず
花壇から蒼天を仰ぎ咲き誇る京藤色に染まるルピナス



【短大生入選作品】

【天賞】
夕方にふわりと潮の香りして潮風夏の始まり教える
【地賞】
気がつけば半年すぎて時は夏コロナ禍により消える楽しみ
太陽がまぶしく輝く空の下ひまわり咲いてる笑顔の数だけ
【人賞】
青春は花火のように一度きりぱっと輝き美しいもの
夏の朝まぶしい玄関母の背は私に語る不撓不屈
炎天下汗ばむ君に恋をした光り輝く夏の思い出
楽しみは雨降った後の長い虹みんなの笑顔輝いてるとき
【佳作】
窓の外昨日も今日も雨の音日が差し込めば梅雨あけるかな
浴衣きて団扇をあおぐ夏祭り花火打ち上げ夏の香り
雨音で目覚めた朝は憂鬱でてるてる坊主もうんざりしてる
セミの声窓の外から聞こえてき夏を過ぎればコオロギの声
夏が来た課題に追われ寝不足だ早く起きろとセミの合唱
今年の夏お祭りもない浴衣着て行きたかったな花火大会
スーツ着てどきどきしてたあの四月あの頃よりは落ち着いたかな
大合唱朝から夕まで猛特訓いつまでもつかな七日の命
マスク越し春の香りを楽しめずいつの間にやら夏の香りへ
夏の日にやけた肌の父を見て心の中で重ねる感謝
頑張れとポンと背をおす父の手と春の風とが勇気をくれる
片思いいつ花開く恋の花会えないほどに愛しくなるよ
短大生楽しい日々にしたいからどんなことでも積極的に
大好きな声が聞こえる電話越しなかなか寝れない幸せな夜
信頼は言葉で伝えるものじゃない揺らがぬ絆それが信頼
ありがとう感謝の気持ち忘れずにこれから先も夢追いかける
ひと目見て心動いたその日から空が広がり胸がいっぱいだ



【大学生入選作品】

【天 賞】
初めての実習疲れ爆睡し知らない駅に停車し焦る
日常がなくなった時人は知るいつも通りの日々の儚さ
【地賞】
5日間慣れないスーツで頑張った自分に贈る冷たいご褒美
新型のウイルス流行り日々狂う希望の光探す毎日
【人賞】
コロナくんそろそろ君が自粛しろ会いたい人に会わせておくれ
毎日が自宅で待機どうしよう食べて食べてはコロナ太りだ
【佳作】
演習時コロナ対策万全でフェイスシールド前が見えない
目覚ましに窓から差し込む陽の光早く起きろと蝉の鳴き声
実習は色んなことを学べたなチームで動き相手を想う
ただでさえ心の距離が遠いのにさらに遠のく社会的距離
暑い上マスクとセットはもう嫌だ慣れそうにないフェイスシールド
コロナ禍の初実習は学内で病院よりも深い学びを
クーラーが効いているから外出れずまだ夏の外には身体が慣れず
桜咲き新たな世界開かれど一寸先もコロナで見えぬ
ウイルスで講義がすべてオンライン少し気まずい初授業
夏の日の入道雲は警報機雨が降るぞと教えてくれる
腹が立つ慣れないパソコンZOOM授業毎回聞かれるパスワード
新年度出鼻くじかれやるせないコロナ騒動早く収まれ
遠隔じゃ分かち合えないしんどさも会って話せる今の喜び


編集後記

 コロナ禍の中、歌集発行まで辿りつけるかと案じておりましたが、児童・生徒・学生の皆さんの多数の傑作に恵まれ、更に保護者・教職員の皆様には花を添えていただきました。
 また、委員の先生方には打合せ会議を一度も開くことができず概要をお伝えするだけで、後はお任せをするということになりました。ご多忙の中での指導、そして回収・選定と例年とは異なる状況の中、ご苦労をおかけいたしました。心から御礼申し上げます。
 多くの方々のお力添えにより、ここに『飯盛嶺』第二十二歌集を発行することができましたことを誠に嬉しく思っております。皆様に感謝申し上げます。
 読者の皆様も短歌を楽しみながら、ご自分の人生をより豊かなものにしていただきたいと思います。


四條畷学園 飯盛嶺歌壇委員会 

 

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